マイ・ブックショップ
マイ・ブックショップ(2018)
1959年、戦争で夫を亡くしたフローレンス(エミリー・モーティマー)は、
書店が1軒もないイギリスの田舎町で、夫との夢だった書店を開こうとする。
しかし、保守的な町では女性の開業は珍しく、彼女の行動は住民たちから不評を買う。
ある日、40年以上も自宅に引きこもりひたすら読書していた老紳士(ビル・ナイ)と出会う。
(シネマトゥデイより)
この映画の色合いがとても好きだ。
イギリスらしい曇り空、海沿いの寒々しい空気感。
それに主人公の落ち着いた佇まいがとても似合っていて好きだった。
主人公の純粋な本への愛、書店への愛が感じられる。
それは彼女の柔らかい笑顔からは想像できないほどの勇気や情熱が彼女自身にあったからだろう。
何事も上手くいくものではないが、彼女は思った以上に上手くいかなかった。
それは彼女が妥協して別の場所に書店を開かなかったかったからかもしれないし、
もしそうしていたとしても上手くいかなかったかもしれない。
戦争で夫が帰らなかった、彼との夢だった書店を小さな海沿いの田舎町に開いた、
ただそれだけのことなのに。
彼女はその町には合わなかったのかもしれない。
今の時代でもそうだが、田舎では嘘か本当か分からない噂話が絶えない。
彼女を陰で良く思わない人がいるのもよく分かる。
だが彼女が独り身ではなく、夫婦で子供もいれば少しは違ったのかもしれないと思ってしまった。
女性が一人で生きて行くというのは、今よりもっと厳しい時代だったろう。
しかし、妥協することは彼女の気持ちが許さなかったのだと思う。
そして、町で唯一の読書家である老紳士と出会い、書物への助言を受けつつ、彼へ愛情を感じ始めたが、それも長くは続かなかった。
監督はインタビューで…
愛とは 手を取り夕暮れを歩く2人のことではなく
心の純粋さや寛容 時には抑制や犠牲でもある
当然 喜びもあるけど 苦しみだってあるわ
それは、彼女と老紳士の関係性そのものだと思う。
自分の気持ちに正直であること、それをまっすぐ行動できること…
簡単なようでとても難しい。
主人公を演じたエミリー・モーティマーがとても魅力的だった。
笑い方が独特だがとても可愛らしい。
衣装も素敵でよく似合っていた。
老紳士役のビル・ナイも、長身で歩き方が凛々しく、素敵だった。
そして二人とも純粋な心の持ち主だった。